-
子宮内膜の成長2011.05.22 Sunday
-
子宮内膜の成長(厚み)がよく問題になりますが、通常は、おおむね7ミリ以上あればあまり気にしなくても良いと言われています。
ところで、調べてみると、内膜の厚さを問題にするのは、「厚み」そのものが問題なのではなく、厚くなりにくいケースでは、その理由に問題があると考えられている様です。
つまり、内膜の厚みは、子宮環境の一つのバロメーターと言えるのでしょう。
子宮内膜の成長の要素は、ホルモンと子宮の血流です。
また、一般にはあまり知られていませんが、組織内に発生する活性酸素なども大きな要因のようです。
だとすれば、ストレスのコントロールや、アレルギー症状の緩和に有効と言われている抗酸化食品などが役立つ可能性もあると思われます。参考資料
黄体機能と子宮内膜環境 : 特に黄体ホルモンと活性酸素-消去系の役割(子宮内膜機能の調節機構 : 着床機構の視点から)
Role of Superoxide Radicals and Superoxide Dismutase in the Regulation of Human Endometrial Function
杉野 法広
山口大学医学部
抄録より抜粋
子宮内膜の変化における活性酸素とその消去酵素であるsuperoxide dismutase (SOD)の関与を検討した.妊娠が成立せずプロゲステロンが消退すると,子宮内膜同質細胞において細胞質内に存在するCu,Zn-SODが低下する.細胞質内で増加した活性酸素は転写因子であるNF-κBを介し,PGF2αの律速酵素であるcyclooxygenase-2(COX-2)発現やPGF2α産生を刺激する.そして,子宮内膜同質細胞から分泌されたPGF2αは子宮内膜の虚血と剥脱を引き起こすほか,子宮筋を収縮させる.一方,妊娠が成立しプロゲステロンが維持されると,Cu,Zn-SODは増加し細胞質内の活性酸素の蓄積が阻止されPGF2α産生の増加が阻止されるので,子宮筋の安静が保たれ妊娠成立にとって好都合な子宮内膜環境となる.ところで,ミトコンドリアに存在するMn-SODはプロゲステロンによる脱落膜化とともに増加するほか,プロゲステロンが消退しても維持される.Mn-SODは脱落膜化やプロゲステロン消退によって起こる細胞機能の亢進に伴ってミトコンドリアで発生してくる活性酸素を消去することにより,細胞の機能維持に貢献しているものと考えられる.また,子宮内膜において,同質細胞はサイトカイン・リッチな環境にさらされる.サイトカインは,ミトコンドリアにおいて活性酸素を産生させ細胞障害性を示すことが知られている.しかし,子宮内膜同質細胞はサイトカインによる活性酸素を介した障害に対しても,Mn-SODの発現を増加させるという防御機構を備えている.すなわち,Mn-SODは細胞の生命維持に貢献しているものと考えられる.
今回,活性酵素やSODといった新たな調節因子の関与を明らかにすることによって新たな病態を考える手がかりとなった.また,活性酸素やSODをターゲットとした新しい診断法や治療法の可能性も期待される.